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2019/01/10

朝がきた

朝が来た

著  辻村深月
特別養子縁組の実親(ひかり)と養親(佐都子)を軸に展開される物語。
物語のリアリティは確かな取材力に裏付けされたものとなっていて、当事者が読んでも違和感のない小説でした。
正直かなり引き込まれて一気に読んでしまいました。
冒頭は佐都子の何気ない日常から始まり、夫、息子との家族の繋がりが描かれていて、特別養子縁組家庭の話とは、分からないストーリー展開。
ここで思うのは、息子の通う幼稚園の先生や友達、親御さん達に特別養子縁組という事が受け入れられているという事。
普段、特別養子縁組に縁遠い方々も、こちらから「特別養子縁組なんです。」と気後れせず、話してみると、すんなりと受け入れてくれるんですよね。
これは私の実体験からも思った事だったので、この物語の中で、周りの人達に受け入れられてる姿はリアルに感じました。
物語ではそのあと、ひかりが佐都子の日常の中に突然現れますが、そこで佐都子の過去に話は変わります。
夫との結婚の後、落ち着いたら子供を。と思いながら、時間は流れ、不妊治療へと進んでいきます。
やはり、この項もかなりリアルに心情などを描いていて、治療を始める時の楽観的な部分と不安との交錯する気持ち、辞めると決めた時の消失感。
徐々に選択肢がなくなっていく恐怖とでもいうんでしょうか。
その中で、特別養子縁組を知り、前へと進んでいく夫婦の想いは、当事者もかなり共感できるのではないでしょうか。
その後、息子との出会いが描かれて行きますが、この項の最後の佐都子の言葉に胸を打たれました。
そして、ひかりの物語へと話は続きます。
中学生にして妊娠してしまったひかり。
その現実がひかりを追い込みます。
家族の説得により養子縁組を選ぶのですが、どんな想いでその日を迎えるのか、個人的にはとても興味があり、改めて実親さんのお話が聞きたい。と、私自身思いました。
その後のひかりの生活は坂を転がるように、悪い方へ悪い方へと向かって行きます。
最後の最後で、ひかりは佐都子と会う決意をするわけですが、その結末はどうなったのか。
2人の母親は物語が終わった後、どうなっていくのかはわからないまま話は終わりますが、少しでもひかりが救われてくれたらと思います。
不妊治療、特別養子縁組とかなりリアルに描かれていますので、興味のある方は疑似体験のつもりで、是非読んでみては如何でしょうか?
特別養子縁組をした家族が普通の家族と何も変わらないという事も読み取って頂けたら幸いです。
ひかりという存在を通して、やはり、彼女を支えてあげられる人間が居なかったのか、残念に思います。女性ばかりが責められてしまう、相手(彼)の責任は、家族の支えは。ひかりだけが全てを背負わなければならないのかと疑問に感じます。
子供を授かった親達は大きな幸せを受け取ります。
産んでくれてありがとう。育てられなくても、託してくれてありがとう。と、我が子を愛せば愛すほど、この感謝は大きくなります。
ひかりのその後の人生が、少しでも報われる事を願わずにはいられません。
&family..
千田真司